※本記事は二部構成です。第一部を未読の方は一部からお読みください。
安部小Project」の事例は地域教育に生きるかもしれない
第一部の記事を読んで、「あれ?」となった人がいるかもしれません。そもそも活動の実質的な起点は校庭の草取りであり、役場に掃除をさせてほしいと意見を書き込んだこと。もっと掘り下げると起点は、安部小学校の閉校…いや、安部小が好きだという母校愛、安部が好きだという地元愛にあります。
この地元愛はいかにして形成されるのか。この「地元愛」こそ、もしかしたら「地域と教育」が育む物なのかもしれないと思うのです。具体的に考えると、「軸を定めることで固定概念や流行に捉われない」というところと「成り行き」という2つにあると思っています。
そもそも『軸』ってどうやってできるのかを考えると、「点→線→平面→立体できて、立体に軸がある」と私は思います。そしてその軸は人生の主軸すなわち「自己理念」になると考えています。
例えば、LEGOでお城を作るのをイメージしてみてください。1つのブロックでは到底お城には見えません。でも、もう1つのLEGOを横に置き広げていけば、土台ができ、それを重ねていくと建物になります。1つでもブロックという“点”すなわち“きっかけ”が欠けるとその“立体”は成り立たないかもしれません。
たかだか草取り、たかが役場への意見投稿。でもそれらがなければ、「安部小Project」という立体にはならなかったかもしれないのです。そして「母校で実行することに価値がある」というもとからあった軸が、今では皆の中で確固たるものとして認識するようになったのは、草取りなどの点を重ねてきたからだと思います。
バブル教育になっていないか
近年「留学、ICT教育、グローバル化、プログラミング、アクティブラーニング、全員がリーダー」など様々な言葉を耳にします。これらは次世代の教育において本当に素晴らしいものだと思います。でも、いたるところでこれらの言葉が使われる、すなわち流行ることが私にとっては謎です。
昔、高度経済成長で信用誇張により価値が肥大化して実際の価値と大幅なズレが生じて崩れ落ちた「バブル経済」によるバブル崩壊がありました。この歴史と現在の教育が似ている気がするのです。
たしかに先述した言葉の中身は素晴らしいものだと思いますが、教える側の教員、習う側の生徒それぞれが、その言葉を使うまたはそれに向かって行く際に、定義づけがなされ、各々が軸を持っているのかということが一番の疑問です。私たちが行なっているような課外活動も同じです。
軸がないのに「経験になるから」とやったとしても、どれほど価値のある学びになるのかわかりません。各々に軸があれば、それは人生の中の起点となる経験になるかもしれませんが、そうでないのならば、理想と現実を分けて考えなければいけないのではないでしょうか。
「経験になるから」という言葉こそが「信用誇張」につながり、価値が肥大化して実際の価値と大幅なズレが生じる。なんなら「バブル教育」と言ってもいいような気がします。そんな流行りになんとなくで乗らない軸こそが大事なのかもしれない。
だからこそ、母校が使えなくなったら、やりたいことがなくなったら、安部小Projectは活動をやめるべきだと思っています。夏祭りをやるためのProjectにはならないでほしい、決して意味のない肥大化をしてほしくない。「成り行き」に任せ、真剣に楽しく取り組んで欲しい。その強い執念があるからこそ、私の活動は実ったのだと思います。
中高生が新しい時代を創る
今、日本の中高生で「安部小Project」のように課外活動をしている団体の数は正式なデータがないものの約700団体はあると考えられます。それらの中高生と話をしてみると成長した団体には『軸』があり、『中高生のノリ』を大事にしているという共通点があることに気がつきました。
社会を知らない社会人の卵にさえなれてない、未熟な中高生。でも、やる気スイッチが入ればとんでもない勢いになります。私は18歳ですが、今の中学生が起業することさえ、もう珍しくない感覚であり、Projectの運営などを通して、そのような可能性の塊である中学生から教わることもしばしばあります。
安部小Projectは「成り行き」に任せすぎた感もありますが、新しい取り組みの難しさでも述べたように徐々に成長していっています。
地域の方や県内外の中高生からも応援のメッセージをたくさんいただき“理解”ではなく“共感”を得られる活動になりました。中高生が中高生のための学校を創る。自分たちの時代は自分たちで開拓し学びを深めることができる環境になればと思います。
教育と私の今後
私は「教育」こそが鳥取を変えると考えています。「安部小Project」の活動を通して中高生による“学び場の創造”が1番の理想なのではないかと再認識しました。しかし、それを学校教育に取り入れるのは無理難題です。
なぜなら、「子供を管理したい大人」と「自由にさせることこそ学びだ」ということは簡単には両立しないと思うからです。だからこそ、そのような場面で、NPOや地域団体と連携することが大事なのだと考えます。
また、教師の中にも熱い想いのある先生はいます。そのような先生が有志で組織を立ちあげ、各校から興味のある生徒がその組織下で活動ができれば、「◯◯やってみたいけど、先生や親に相談しても良いアドバイス貰えんし結局何もできてない…」という、意欲があるのにもったいなすぎる事案が少しでも解消できるのではないかと思います。
今、大学共通テストの是非が問われています。このことについては言及しませんが、今後さらに教育のあり方が問われてくると思います。私は地域教育と数学教育について学んだ上で、上記のような組織・団体を設立し、子どもたちの“学びの場”を創りたいと考えています。
今回は、私の考えを稚拙ながら綴らせて頂きました。最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。
※内田さんの記事は第二部で終了ですが、コラム記事があります。
プロフィール
氏名: 内田奏杜
所属:安部小Project
経歴: 平成13年、鳥取県八頭町生まれ。安部保育所、安部小学校を卒業して鳥取市の青翔開智中学校・高等 学校に進学。平成30年に中高生団体『安部小Project』を設立し、令和元年に『SustainableGame』 に所属。自己理念『モノではなく心』を胸に『子どもたちの“学び場”を創る』という未来像を達成するため日々奮闘中
連絡先:k.uchida.14124@gmail.com