次世代

高校生が閉校した母校に中高生のための「学びの場」を創った話

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編集室からの挨拶

 「学生である高校生が学びの場を創るってどういうことだ?」と、タイトルから疑問を持つ方もいるかもしれない。しかし、これは誇張したタイトルではない。事実として、学校の中に「学びの場」を高校2年生の時に創った高校生が鳥取県にいる---

 今回は、高校3年生の内田奏杜さんの独占記事となります。内田さんが設立した「安部小Project」を題材に、内田さんには地域づくりと教育の関係について語って頂きました。内田さんの熱い想いをしっかりとお伝えするためにも、2部構成+コラムの3連載を予定しています。

第一部は

【高校生が閉校した母校に中高生のための「学びの場」を創った話】

第二部は

バブル教育ではなく、学びの場を作る

コラム

18歳の僕が考える、「自己理念」と「地域活性化」

 本記事を通して、次世代の価値観にも触れていただき、中高生の持つ可能性を感じて頂ければ幸いです。

2020年1月現在、高校3年生の内田奏杜さん

はじめに。「安部小Project」とは?

 『安部小Project』とは、閉校した母校の安部小学校を卒業した現役中高生が集い設立した団体です。『溢れる「地元愛」、蘇れ!我が母校』をスローガンに、月1回の廃校舎内清掃活動や地域の方々にお越し頂ける「安部っ子夏祭り」を開催しています。

 地域活性化と堅く捉えるのではなく『自分たちの「やりたい!」を母校を舞台に挑戦し「地元愛」を育むことで地域に貢献する』ことを活動の方針としています。母校で実行することに価値があると強固たる『軸』を定めてはいますが、ゆるく成り行きで活動をしています。

 現在では16名の正式メンバーに加えて「安部小Project」の方針に“共感”した多くの中高生が集まり、夏祭りのスタッフは37名(10の中学校・高等学校から集結)まで増えました。

 また、その夏祭りには約400名の来場、資金調達や保険契約なども全て中高生が行い、メンバーの意欲向上や活動の作用による地域活性化の成果が認められ、鳥取県知事や福知山公立大学学長、Prudential生命,ジブラルタ生命主催の大会などで数々の受賞もしました。2年間の私たちの成長、そして中高生の可能性をこの記事でお伝えできればと思います。

大会で表彰台にあがる内田さん

設立のきっかけ

 「安部小Project」を設立したきっかけ設立したきっかけは2つあります。

 1つ目は自分の通っていた母校が閉校した年の夏、校庭に雑草が繁茂していた光景を見て、草を抜きたくなったのです(自分でも謎ですね笑)。30°Cを超える酷暑の中、近所の後輩と2人で草取りをしました。その際に校舎の中を見ると、そこにはガラクタの山がありました。「母校の汚さ」に何とも言えない虚しさを感じました。そこで、地元である八頭町のHPの意見投稿に「掃除をさせてほしい」という旨の内容を書き込み、許可を頂いて秋に廃校舎内清掃活動をスタートさせました。

 2つ目は、現在の鳥取が中高生の「やりたい!」という好奇心に応えることのできる環境には整っていないと感じていたからです。実際、県内の高校生が集まるイベントに参加した際にも「◯◯をやってみたいけど、先生や親に相談しても良いアドバイス貰えんし、結局何もできてない…」という声が多く聞こえました。意欲があるのにもったいと思いませんか?

 かくいう、私もそんな1人でした。そこでふと、「中高生が中高生のための学校を創っちゃえば、解決するんじゃないのか!」と思い至ったのです。敢えて、大人を交えない中高生団体を1つ創り、その中で1人の「やりたい!」という提案に“共感”したメンバーが集まって、それをとことん追求する。

 成功もあれば、失敗もある。笑いもあれば、涙もある。でも、その中で得るものが人生に影響するほどの学びとなるはずだと考えています。このような「主体的な学びがある教育機関」が今の時代は求められているのではないでしょうか?とはいえ、いきなり大きなことを実現することは難題なので、安部という地域に限定し、地域教育にも目を向けて設立しました。

 つまり、私の活動の原点は「地元愛&母校愛」と「地域×教育」に帰着するのです。この2つの想いをベースに、清掃活動を進める中で、地域の方にお越し頂けるような機会を設けたいという案が浮かび、夏祭りの構想へと広がっていったのです。「安部小Project」を設立してから約4ヶ月で400人以上の来客を実現した「安部っ子夏祭り」をやり遂げることができました。

新しい取り組みの難しさ

 分かりきった話なのですが大きなことに挑戦するのは想像以上に困難でした。教育の理想論が今すぐに実行可能ならば、正直もうすでに鳥取にもあり、誰かが実現していると思います。だとすると、「やれない」か「やってこなかった」かの二択なのです。常に変化する時代の中で、教育は果たしてアップデートされているのかという疑問があります。

 安部小Projectを設立する際、小規模校で幼馴染の仲がとても良かったことが幸運でメンバーは比較的すぐに集まりました。しかし、中高生にとって本業は勉学であり、人によって部活、趣味、恋愛、家庭環境などバラバラです。さらに、当然ながら夏祭りの運営などやったこともありません。資金集めや保険契約なんてもってのほかです。そんな中で私が最初に悩んだことは、どうやってメンバーを統一し、どうやってモチべーションを上げるのかでした。私がとった行動は次の通りです。

①メンバーから「やりたい!」ことを聞く

②その中から私の独断でメンバーが「できること」「できるか微妙なこと」「できないこと」に分類する

③活動の『軸』だけを全員が常に意識するようにして「できること」を自由にさせる

④失敗やトラブル(他団体とのすれ違いなど)を私が対処し、どうしたら良かったか皆んなで考える

⑤実行する時は、楽しむ・盛り上げる・青春の三要素を忘れない(3つとも同じことなのは気にしない笑)

⑥「やりたい!」ことができたら打ち上げをして次の構想を膨らます。

 という感じで、いたって普通です。でも、当初はそこまでやる気のなかったメンバーがこのプロセスを通して最終的には凄く積極的になったのです。というのも、第1回「安部っ子夏祭り」で最初(1の段階)は消極的だったメンバーが、夏祭りを終えた後、「来年の第2回は自分たちでやってみたいです!」と言ってくれました。

 そして、第2回を第1回とは違う趣向で本当にやってのけたのです。私がメンバーに「自分たちのやりたいことを自分たちのできる範囲でやればいい。もし失敗したら自分(内田)が全部何とかするけ。」と常に言っていた甲斐もあったのか、第2回安部っ子夏祭りの時、メンバーは自由に表情は輝かせて活動していました。 それが私もとても嬉しかったです!

※第二部に続く

プロフィール

氏名:内田奏杜

所属: 安部小Project

経歴 : 平成13年、鳥取県八頭町生まれ。安部保育所、安部小学校を卒業して鳥取市の青翔開智中学校・高等 学校に進学。平成30年に中高生団体『安部小Project』を設立し、令和元年に『SustainableGame』 に所属。自己理念『モノではなく心』を胸に『子どもたちの“学び場”を創る』という未来像を達成す るため日々奮闘中。

連絡先:k.uchida.14124@gmail.com

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