事例

たゆみない成長意欲とひたむきな自律で発展する女性下着縫製業『株式会社トリーカ』(前編)

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旬刊政経レポートとのコラボ企画

 この度、旬刊政経レポートと、月に一度の記事交換をさせていただくことが決まりました。第一回目は名和町(現・大山町)発祥の『株式会社トリーカ』のインタビュー記事を掲載させていただきます。

『株式会社トリーカ』

 布を裁断し針と糸で縫いあげ衣類を作る縫製業。人手に頼るため手間と人件費がかかる。海外との厳しい競争にもさらされる。多くの人は「斜陽産業」と見るだろう。

 しかし名和町(現・大山町)発祥のトリーカは、縫製業として約60年に渡り存続、発展してきた。大手老舗企業でありながら、ベンチャーのような気鋭にあふれている。

株式会社トリーカ代表取締役社長 岩村真二

聞き手:北村真吾/中小企業診断士

御社の事業内容を教えてください。

 当社は、大手下着メーカーである株式会社ワコールのグループ会社です。ワコール商品のうち主にブラジャーや肌着など女性用下着を製造しています。

 昭和36年に名和町で設立してから約60年間、ずっと衣類の縫製に取り組んできました。現在では県内の大山工場、米子工場、北条工場、青谷工場を含め国内に8つの縫製工場があります。従業員数は当社だけで約500人。国内外の協力工場を含めると900人です。うち約90%が女性です。

ワコールと御社はどういった関係でしょうか。

 当社株式の57%がワコールです。ただ、出資は受けてはいますが、仕事が自動的にもらえるわけではありません。ワコールは国内だけでも3つの縫製会社を持っています。当社も含めて複数の縫製会社を比較し、それぞれの商品特徴に合った会社に製造を依頼します。

 当社は、これらライバル会社と同じことをしていては、ワコールから見ても社会的に見ても存在する意味がなくなってしまいます。だからこそ、品質、技術力、生産ノウハウなどにおいて、競合他社より1歩も2歩も先に進むことが、当社経営のモチベーションになっています。

 特に当社が得意なものは、サイズオーダーのブラジャーです。これはワコールグループの縫製会社でも対応しておらず、当社のみが製造しています。

サイズオーダーのブラジャーとはどのような商品でしょうか。

 お客さん1人ひとりに合わせて作るブラジャーです。一般的な既製品ではぴったりフィットしない方がお客さんです。

 大柄な方、小柄な方。お店のスタッフが来店したお客さんの胸回りを多くの箇所を採寸し、その方に合うサイズ、デザイン、機能を決めます。それらのデータがお店からワコール経由で当社に届き、当社の工場でその方に合わせたブラジャーを作ります。

 お客さんから見ればせっかくオーダーした商品。デザイン性も品質も高くなければ満足してもらえません。しかも、オーダーごとに異なる商品を作らねばなりません。安価な商品を大量に生産するタイプの工場では対応できないのです。

 既製品では満足できない。私の体や生活スタイルにぴったり合ったブラジャーを、安心感のある会社に作ってほしい、という女性は今後ますます増えるでしょう。

 彼女たちの期待に応えるブランド力と品質が求められる重要な事業を当社は任せてもらっています。

 この事業の始まりはワコールからの要請でした。当社が長年に渡り地道に実直にものづくりを続けてきたことが評価されてのことです。

縫製業として発展してきた御社ですが、どのような経営方針がありますか。

 地道に実直にやってきたトリーカらしさを失わないことです。今日お越しいただいたこの建物が当社の本社です。事業規模の割に小さいと思われたでしょう。各地の生産工場は大きくて立派なのですが、本社は賃貸物件です。しっかりした生産技術や製造ノウハウは必要ですが、派手なアピールは重要だとは思いません。

 必要な時に必要とされる会社であるよう、これからも地道に実直にものづくりを続けていきます。本社も管理部門も社長室も必要最低限でいいのです。

 もう一つは歴代社長のあり方です。当社は創業から60年を経て、私が7代目の社長です。私も含めて今までの社長は、当社の従業員の中から殆ど選ばれています。

 それぞれが企業のトップとなり、将来に向けた取り組みをし、そして時代の変化に合わせて会社を変えるため邁進してこられました。18歳で就職し、3年前に56歳で社長になった私が先輩を見て学んだことは、「会社の将来をどう描き、どう示すのか」ということです。

優れたものづくり企業として評価されるまで、どのような道のりがありましたか。

 当社の生産の特徴は、作る商品は多様でも、作る量は少しずつということです。現在の年間生産量は約600万枚。そのうちブラジャーは複数アイテムあります。同じ商品でもサイズ、材質、機能、デザイン違いがあり、組み合わせは100種類以上あるのではないでしょうか。

 約20年前、表示タグの付け間違いが問題だった時期が最も苦しかったです。当時従業員だった私はこの問題を解決すべく全国の工場を回り、原因究明と対策に取り組んだものでした。

同社の本社社屋。建物も看板も小さく、気づかず通りすぎるほどのつつましさだ。

会社情報

『株式会社トリーカ』

代表取締役社長:岩村真二

事業:女性下着縫製業

所在地:大阪府茨木市東太田三―二―一〇

従業員:約500人

資本金:9240万円

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