事例

たゆみない成長意欲とひたむきな自律で発展する女性下着縫製業『株式会社トリーカ』(後編)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

旬刊政経レポートとのコラボ企画

 この度、旬刊政経レポートと、月に一度の記事交換をさせていただくことが決まりました。第一回目は名和町(現・大山町)発祥の『株式会社トリーカ』のインタビュー記事を掲載させていただきます。

 本記事は、後編になります。

 法律。契約。会社規定。私たちは多くのルールの中で生きている。これらが守られなくなるきっかけは何だろう。大手下着メーカー、ワコールのグループ会社として発展してきた株式会社トリーカは、八つの工場と500人の従業員を抱える大企業ながらオーダーメイドに対応する柔軟さを持つ。岩美町出身の岩村社長に、社内ルールを確立するまでの道のりを聞く。

株式会社トリーカ代表取締役社長 岩村真二

聞き手:北村真吾/中小企業診断士

 ものづくり企業としてワコールから高い評価を受ける御社は、どのように品質を高めてきましたか。

 例えば、過去に表示タグの付け間違いが問題になったことがありました。

 間違ったタグがついた商品がお店に並ぶと、ワコールにもお店にも、もちろんお客さんにも迷惑をかけてしまいます。場合によっては家庭用品表示法違反です。一方で、当社が製造するブラジャーは仕様違いで100種類ほどあり、作業者にとっては、どの製品がどういう仕様なのか複雑な上、見た目には分からないのです。

 品質問題を防ぐためには、製造を担当する本人だけではなく誰が見ても分かるよう、作業マニュアルと、そのとおりに作業が進められたかを記録するチェックリストが必要です。

 作業マニュアルとチェックリストは、まさに会社のものづくりルールそのものです。工場を回って原因究明と対策立案をする中で、現場では時としてルールが正しく守られていないことが分かりました。

 ルール通りにできなかった作業が発生したとしても、わざと手を抜いたわけではありません。その日たまたま、納期が間に合わないから急いでくれと上司に命令され真面目に従っただけなのです。

 ただ、急いでいたからと、例えば3つあるチェックのうち、その日は2つしかチェックしなかったとしましょう。それが、次の日から2つしかチェックしないことが当たり前になり、しばらくすると2つが1つに減り、いつしか誰も何のチェックもしない会社になってしまうのです。

 上司が納期を急ぐあまりルールの後回しを見て見ぬ振りすると、ルールそのものが変わってしまいます。また、ある人には注意したのに他の人には注意しなかったとしたら、ルールは守っても守らなくてもどちらでもいい職場環境になってしまいます。

 対策は人材教育しかありません。「マニュアルどおり測定してください」「チェックを付けてください」「結果は正しいですか?」と、ルール定着に向けて確認するという仕事を、今も地道に取り組んでいます。

ルールの他にも必要なものはありますか。

 一人ひとりのモチベーションですね。モチベーションが上がれば品質や生産性は上がります。逆に、モチベーションが下がればすぐに下がります。

 一人ひとりのモチベーションを高めるために、当社ではコミュニケーションを重視しています。当社の人事評価は、会社がその人をどう評価しているかについて、上司から作業者1人ひとり、本人に伝えるように進めていこうとしています。

 ここでのポイントは、評価の低い人との面談です。本人なりのがんばりについてお聞きすると同時に、今後は何をどうがんばってほしいのかを、会社からの期待として具体的に伝えてあげます。

 人事評価を取り入れている会社は多いですが、それを本人に面と向かって伝える会社は少ないのではないでしょうか。当社では、人事評価を通じたコミュニケーションで一人ひとりのモチベーションが高まるようにしようと考えています。

コミュニケーションを重視する岩村社長の入社当時の様子を聞かせてください。

 鳥取商業高校の3年生だった私は、希望していた金融機関に就職できず落ち込んでいました。そんな時、就職課でトリーカの募集を見て何となく応募し、そのまま入社しました。

 最初の勤務先はいきなり大阪営業所。岩美町の岩井温泉で生まれ育った私は、周りの大阪弁の早さと威勢の強さに圧倒されました。同時に、田舎者と思われたくない気がして、鳥取弁が出ないよう、そもそも人としゃべるのを何となく避けていました。自分の殻に閉じこもっていたのかもしれません。

 もちろん、入社から今日まで真面目に仕事に取り組んできた経験は今の経営に生きています。ただ、もっと荒っぽくてもやんちゃでもよかった。思ったことは言葉にし、やりたいことはやる若さがあってもよかったのかなと思います。

自分で事業を立ち上げたい鳥取の若者にメッセージをお願いします。

 社会全体が若者の起業を認め、応援する時代になってきました。起業しやすい環境も整いつつあります。鳥取には農産物だけではなく、砂丘や大山、アニメキャラクターなど社会的な資源が豊富です。人口は少ないけれども夢や魅力があります。

 約60年前、大阪の繊維企業が名和町に子会社を作ったのが当社の発祥でした。当社の社名、トリーカの「トリ」は、鳥取の「トリ」。「カ」は、みんなで力を合わせていきたいとの願いを込めて、漢字の「力(ちから)」に見立てたものです。

 実は、7代目の私が初めての鳥取県出身の社長です。郷土の魅力がより輝くような事業を目指す若者に、協力していきたいと思っています。

 質素な社長室にて。奥にかけられた鳥取銀行のポスターには星取県の文字がある。

会社情報

株式会社トリーカ

代表取締役社長:岩村真二

事 業:女性下着縫製業

所在地:大阪府茨木市東太田三―二―一〇

従業員:約500人

資本金:9240万円

TOTTORI BUSINESS ONLINEの感想

株式会社トリーカの社長岩村様の、ライバル会社との競争や、人事での取り組みなどのお話を通して縫製業としての素晴らしい心意気が伝わってきました。

特に、他のライバル会社と同じやり方で競うのではなく、 ブラジャーを一人ひとりのサイズに合わせて作るという他と違った戦略をとることで、トリーカという会社の力を上げると同時に、ワコールの商品の幅広さを作り出していることに驚かされました。

これからも月に一度、旬刊政経レポートの記事をあげていきますので、是非ご覧ください。

旬刊政経レポートの定期購読はこちら↓↓↓

http://www.seikeireport.co.jp/

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket