事例

砂丘地でラベンダーを栽培 “6次産業美容師”がヘアケア商品開発

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旬刊政経レポートとのコラボ

 月に一度、旬刊政経レポートと記事交換をするコラボをさせていただいています。第11回目は【砂丘地でラベンダーを栽培 “6次産業美容師”がヘアケア商品開発】という記事を掲載させていただきます。

 農業×美容

 平成30年に開通した鳥取空港賀露線沿いの砂丘地にある42アールのラベンダー畑。そこで栽培されたラベンダーを原料にした『sakyuミドレシャンプー/トリートメント』が2月5日、発売された。

 栽培、加工から商品企画・開発までを手掛けたのは、「農業×美容」というこれまでにない挑戦を行う“6次産業美容師”で、㈱101(鳥取支店:八頭郡若桜町赤松681)代表取締役の寺田健太郎氏。

-砂丘地のラベンダー畑で寺田代表-

 同氏は京都府出身。大阪、神戸、京都で4店舗を展開する美容室『MOK』を経営する美容師だ。 

 「一番下の子どもが保育園、看護師をしている妻が育休復帰、というタイミングで鳥取に移り住もうかと。同じ時期に、MOKの運営会社の、30代の幹部3人が『もっと我々に権限を委譲してほしい』と申し出てくれました。現場は任せてくれ、という事で、これも鳥取移住の後押しになりました」と寺田代表。

 その後、新たに㈱101を設立。2019年4月に、当時住んでいた西宮から奥さんの地元、鳥取市に移住した。昨今はコロナ禍でままならないが、鳥取と関西とを行き来しながら美容室の経営を続けている。

 「実は3年ほど前から兵庫の三田でラベンダーを栽培し、シャンプーを作っていました。競争の激しい美容業界で、人口減少による需要減も見込まれる中、独自性が必要だと。美容室で使うシャンプーを自分たちで作り経費を抑え、さらに商品を販売して売り上げを増やす。そのような発想で始めたものです」。

 移住後、鳥取で圃場を探していたところ、砂丘地の畑があることを知り、現在の場所で栽培を始めたのが昨年。

 「ラベンダーは水はけのよい場所を好み、乾燥や塩害に強い。砂丘地での栽培例は聞いたことが無いですが、ひょっとしたらラベンダー栽培に非常に適しているかもしれないという事で、三田の畑を止めてこちらに移行しました」。

 初年度の生産は順調に進み、6月から7月にかけて収穫されたラベンダーは、若桜町の鳥取支店に設置された36Lの蒸留器で、ラベンダー水とラベンダー油に精製。神戸市で商品に加工し、シャンプー400mlと、コンディショナー400kgが製造された。

 開発の段階でMOKの美容師22名が携わっているのも特徴の一つ。「同じラベンダーでもどんな香りにするのかとか、実際にシャンプーした時の手触り、髪質やカラーへの影響を試したり、日々お客様と接する中で『どんな気分を味わって頂きたいのか』など意見や感想を吸い上げたり、スタッフ一丸で開発が進みました」と寺田代表。

 同氏は複数県で美容室を経営する中で、店舗内の縦のつながり、同期らとの横のつながり、そして他店舗スタッフとの斜めのつながりが重要だとして、店舗横断型による活動を実施。

 他地域多世代の交流を生んだり「年に2回は代表と飲みに行く」を定例化させたりと、コミュニケーションや信頼関係の構築を重視しており、それによって育まれたチームワークがこの度の商品開発にも大いに活きた。

 『sakyuミドレシャンプー/トリートメント』は、200ml(g)で税別2000円。心身の健康や美容、動物愛護、環境保全など様々な理由で、動物由来のものを一切使わない、英国発祥の『Vegan』にも認められており、髪にも、地球にも優しいシャンプーとなっている。

-商品は『Vegan』の認証を受けている-

 専用通販サイトで販売され、鳥取県内は500セットの限定販売。今後、店舗など販路開拓にも力を入れる。

 「まずは鳥取に観光などで来られる方がターゲット。今はコロナ禍で厳しいですが、例えば宿泊施設のアメニティで使っていただき『鳥取の砂丘地で栽培されたラベンダー』という付加価値を活用して頂いたり、癒し効果でヘッドスパサロンを併設してみたりとか、様々なアイデアがあります。

 移住してきて、鳥取に貢献したいという思いが強い。ぜひ同じ思いの方と繋がりたいですね」と寺田代表。

 今春には新たに、隣接地の約30アールでも栽培を始める予定で、3年後をめどに今回の5倍程度の収量を目指す。

 最後に「子供たち世代のために良いバトンを渡したい。鳥取の自然、文化、暮らし、全部を豊かにする。そのお手伝いが少しでもできれば」とした。

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