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鳥取県の今をラベリング理論から捉える

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鳥取県には全国的に有名な地域はあるだろうか?

 「地方」、「地域」という言葉を通して、人によってイメージする風景や人に大きな違いがあるはずだ。

 私は、廃校寸前の島の高校を入学希望者殺到の高校に変貌させた地域や、人口が1500人を切るにもかかわらず「ローカルベンチャー」と言えば必ず名前を聞くようになった地域など地方創生において頻繁に名前の上がるような地域から、知名度はなくとも自治機能が高い水準で機能している地域まで幅広く足を運び見てきた。

 これらの地域は、鳥取県から地理的に近い場所に位置する。なぜ、鳥取から同じように全国的に名前が知られる地域が現れないのか(鳥取にある地域は、それぞれが沢山の魅力を持っていると承知の上で、都心に出た際に認識されていないという現実をもとに話を進める)。

 私はその一つの仮説として、「鳥取県民のラベリング」があるのではないかと考えている。

ラベリング理論(逸脱理論)

 「ラベリング理論」という言葉をご存知だろうか?ある悪い行いをしてしまった人が、周りから「悪いやつだ」とラベリングされることで、「自分は悪い奴なんだから悪いことをするぞ」と開き直り、悪行に磨きがかかるということである。この悪い意味のラベルのことをスティグマ(落胤)という。

 これは、逆のパターンにも当てはまり、模範的な人に周りが、「あなたはいい人だ」ということにより、その人が良い人であり続けようとすることでもある。社会学者H・S・ベッカーが構築した理論で、ベッカーは「逸脱などの行為は、他者からのラベリング(レッテル貼り)によって生み出される」と指摘した。

スティグマ(落胤)を自分たちで生み出していないか

 私は鳥取県において県民同士が悪いラベリングを相互に行い、スティグマを生み出してしまっていると考える。

 地域におけるスティグマとして挙げられる言葉には、「この地域には何もない」「どうせ何をしても無駄」「所詮田舎だから」というワードがあるだろう。そして、これらのラベルを鳥取県に来てから私は何度も聞いた。

 ご年配の方だけではなく、若い経営者や学生からも聞くことがあった。仮に、鳥取県を少しでも良くしようと働きかけている方でも心のどこかで、「どうせ動かないと思うけど」「どうせ変わらないけど」と、周りに対してそう思っていたのではないだろうか。

 そのような心理は、日常の発言の中で地域の人々をラベリングしてしまっているかもしれない。そして、生み出されたスティグマが、鳥取を誇ることを妨げている。

鳥取県に素敵なラベリングが増える未来

 鳥取県には、他県にはない魅力を持つ地域が多数存在する。鳥取市の民藝をはじめとする文化的な資本、県外のファンを多数抱える智頭町のパン屋や湯梨浜の宿、観光資源としての可能性を秘めた鳥取砂丘、梨や和牛など全国的にも品質の高い農産品、八頭町は廃校の利活用の分野では先進的である。

 後は、挑戦するプレイヤーだけでなく地域の全体が「良い未来を作ることができる」と、自分だけでなく地域の人をラベリングしていくこと、つまり信じ抜くことでしか、地域は本当の意味でスティグマを取り払うことはできないのかもしれない。

 なぜなら、全国的に注目される地域では、「なんとかなる」「どうなろうが面白くなる」「ないものはない」「期待している」などの相互のポジティブなラベリングで満ちていたからだ。

参考文献

「社会学用語図鑑」

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