事例

大学のオンライン授業化

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鳥取大学でもオンライン授業が開始

 鳥取大学では当初予定されていた4月8日からの新学期開始が、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、4月22日まで延期になったと同時に全授業がオンライン化になりました。

 どの授業も初回は皆慣れない状況に戸惑い、講師も「初めてのことで私も戸惑っております。」と口をそろえておっしゃっていました。そのようなオンライン授業ですが、本記事では「オンライン授業の様子」について実際に授業開始から約3週間分のオンライン授業を体験してみた学生の感想などをそれぞれの項目で添えています。  

 鳥取県の小中高では、登校する時間帯を分けて、三密を防ぐなどの新たな授業形態の取り組みなども行われていますが、今回はあくまで遠隔で行われる授業に焦点を当て、実際に行われている大学の状況を参考にして書いた記事であるため、ご注意ください。

具体的な授業形式

授業の形は主に次の2つに分類されます。

ライブ形式の遠隔リアルタイム授業

 複数の人が画面に顔を映しながら同時に会話ができる会議ツールを活用してリアルタイムでどこからでも授業に参加できる形式です。

 主に利用されているサービスは大学からも推進されている「Google meet」です。しかし、授業によっては、「Zoom」を使うところもあります。

オンデマンド式の授業

 予め授業を撮影して、学生のみが見ることができる共通掲示板で撮影した動画を講師が掲載し、生徒は期限内であればいつでも視聴ができるという形式です。

現状授業として機能しているのか

 やはり、皆様が気になっているところは、授業がオンライン化することによって、授業としてしっかりと機能しているのかということでしょう。

 結論から申しますと、大半の授業は機能しています。しかし、一部の授業はうまく機能していないのが現状だと思われます。原因として挙げられるのは主に2つです。

 一つ目の原因は、対面接触が前提で成り立つ内容で組み込まれている授業が大打撃を受けたことです。大学の授業の中には、グループワークを主にしていく授業や、フィールドワーク、社会調査など屋外での活動が必要な授業があります。

 屋外での活動が必要な授業が稼働困難な状況にあることは、活動自粛が求められる現社会状況からも予測がつくと思います。

  原因の二つ目は、オンラインツールを全員が使いこなせるというわけではないということです。誰しも得意や不得意があるのは仕方がないことです。しかし、オンラインツールをうまく使いこなせる人とそうではない人。この両者の間に、大きな差が生じてくることは避けられないことです。

 お互いの連絡手段やレポート課題など、様々な事柄に対して苦労をしている学生や教授は少なくないと思います。

ライブとオンデマンド、どちらが良いのか

 先にお伝えしました通り、オンライン授業は主に「ライブ授業」と、「オンデマンド授業」の二つの形式があります。メリットとデメリットを踏まえ、筆者である私自身が思うより良い授業形式を考察していきます。参考程度にご覧ください。

「ライブ授業」のメリットとデメリット

メリット

  • 緊張感がある

 オンデマンド授業に対して、ライブ授業というのは決まった時間でしか授業が受講できません。

  • 講師や生徒と、リアルタイムで対話ができる

 ライブ授業だと、同じ時間に皆がオンラインの場で集まることから、マイクやチャットツールによってその場で講師と生徒、生徒と生徒は意思疎通ができます。

デメリット

  • インターネットの接続状況に左右される

 生徒によっては、家の無線通信に突如トラブルが発生した場合、授業に参加できなかったり、授業の途中で見れなくなったりというリスクがあります。

  • 100人単位での授業ができない

 授業の中には、科目によって大人数の生徒が受講する授業があります。これは実際に私が体験したことですが、大人数が一斉に一つのオンライン授業にアクセスするとレスポンスが悪くなり、講師の声が途切れ途切れになるなどのトラブルが発生しました。

 そのトラブルを生徒がチャットで指摘しようとすると、100人以上いる生徒が一斉に同じようなコメントを投稿し、余計にパソコンが重たくなり、授業がまともに進行できなくなるということが起きました。

「オンデマンド授業」のメリットデメリット

メリット

  • 自分のペースで進めることができる

 オンデマンドは聞き逃しがあれば巻き戻すことができます。また、理解できるまで動画を一時停止して自分の頭で整理する時間を作ることができるのです。

  • 授業時間が大幅に短縮できる

 オンデマンドの動画は基本的に倍速再生が可能です。それによって授業を本来の時間の半分で終わらすことができます。さらに、明らかに理解できている箇所は飛ばすこともできます。

 また、以前までの授業では講師が生徒を飽きさせないために「雑談を挟む」ことがしばしばありました。しかし、それが必要でなければ飛ばすことが可能です。

  • 定刻まで授業を続けなくてもよくなる

 例えば、授業の場合、その回で進むべき到達目標を予定の授業時間よりも早く達成したとします。その場合、オンライン以前の授業形式であると、終了時間まで時間潰しをされることがよくありました。

 しかし、オンデマンド授業の場合、終了時間など関係ありません。その授業でやるべきことが終われば、各々によって異なる今やるべきことに講師や生徒は取り掛かれるのです。

デメリット

  • 後回しにしがち

 視聴できる期間があると生徒の中には視聴するのを後回しにして、視聴可能期限ギリギリになって慌てて視聴する生徒もいると思われます。生徒によってですが、時間を指定するライブの方が時間を管理しやすいという生徒がいるのかもしれません。

  • その場で質問できない

 オンデマンドはリアルタイムでの対話ができません。そのため、質問がある場合は講師にメールを送るなどをしなくてはなりません。返事が遅いと疑問を解決するのに時間がかかってしまいます。

「ライブ授業」と「オンデマンド授業」のどちらが良いのか

 では、「ライブ授業」と「オンデマンド授業」のどちらが良いのかという話に戻ります。

 結局のところ、どのメリットデメリットをとるかは人それぞれですので色々な意見があり、どちらが良いと一概に決めつけることはできないと思います。しかし、多くの生徒がオンデマンド形式の授業に満足していると思われます。

 実際に私も私の周りの生徒も、自分の好きな時間に自分に合ったペースで視聴ができ、それによって理解できなかった授業が減ったという面で、オンデマンド形式の授業が良いと感じています。

オンライン授業の課題

 オンライン授業にはまだまだ課題となる点がいくつかあります。

 大きな問題として「テスト」があります。自宅で試験を受ける以上、試験監督を用意することができません。そのため、カンニングや生徒同士で教えあったりするなどの問題が生じてきます。

 レポートであっても同じことが言えるのです。多少文章の体裁を変えるなどすると、誰かの文章を映したと見破ることは困難となります。

 次に大きな問題として「個人情報が危険にさらされる」という点があります。オンライン授業では、生徒個人の顔と背景にその人の部屋が映ります。

 背景に関しましては、加工できる機能が備わっているので見えなくすることができますが、生徒の顔が画面に映り、それを受講者全員が見ることができるとなると、生徒の顔を写真でとるなどその人の肖像権を侵害する行為が可能となるのです。

 これは、私がライブ授業ではなくオンデマンド形式の授業の方が良いと考える理由の一つでもあります。このようにオンライン授業には、まだまだ改善すべき課題があります。

最後に

 以上が新型コロナウイルスの影響による大学のオンライン授業化の現状です。良いか悪いかの判断は人それぞれですが、今回の事例をきっかけにこれからの学校教育を考える非常に良い機会になっているとも考えられます。

 「ライブ授業」と「オンデマンド授業」のどちらが良いのかというリアルな問題についても、今後議論が深まっていく必要があると思います。

 本記事の発信によって、今の大学生の状況が少しでも多くの大人の方、特に教育関係者や、心配されている保護者の方々などに伝われば幸いです。

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