旬刊政経レポートとのコラボ
月に一度、旬刊政経レポートと記事交換をするコラボをさせていただいています。第10回目は【自然体の経営で組織に活力~江戸時代から続く老舗酒蔵~稲田本店】という記事を掲載させていただきます。
「稲田姫」をはじめとする日本酒や、リキュールなどを製造する㈱稲田本店(米子市夜見町325-16、成瀬以久代表取締役)。江戸時代から続く老舗酒造会社で、現在も上質な酒を提供している。
また、関連会社の㈲ウメハラは成瀬社長の父が創業した酒類・食品の小売・卸売業で、現在はこちらも成瀬氏が社長を兼任しており、製販一体の体制となっている。
「父は、郡部から米子市内に出てきて得意先もありませんでしたから、自分で中古のビルを買ってそこに飲食店を作りテナントとして入れ、得意先を作り出したんです」と成瀬社長。
これが現在の稲田本店の不動産部の前身である。そして、平成初期に稲田本店を購入することとなる。
成瀬社長は「実は、もともと父の実家が南部町(旧・会見町)で小さな酒蔵を営んでいました。戦時中、酒米は配給制になり、酒造会社の整理統合も行われ、酒造りを辞めざるをえない状況に追い込まれたという過去があったんです。ただ父は家業だった酒造業をいつか復活させたいという想いがあったようで、地元の金融機関から稲田本店の売却の話を聞き、購入したんです」と話す。
成瀬社長は名古屋の大学を卒業後、そのまま名古屋で就職・結婚し生活していたという。その後、家族の事情で米子に帰郷。夫婦で稲田本店に勤めることとなった。
「父とは喧嘩ばかりで、会社を継ぐなんて思ってもいませんでしたが、父に『子供はお前しかおらん。もし会社がだめになってもお前なら諦めがつく』と言われ、ほんならやったるがんと、社長になりました」と笑う。
また「社長になって10年以上になりますが、営業は本当に苦手です。それに実はあまりお酒に強くないんですよ(笑)。従業員にはみんなのおかあちゃんっていう感じで接しています。よく『嘘ついたらすぐわかるで!』と言っています。おやつも欠かしませんよ。休憩時間におやつを食べ、話をしながらみんなの気持ちや体調を感じ取るようにしています」。
「業務については、ウメハラの事と稲田本店の事を完璧にこなすのは無理なので、自分のできないことは割り切って任せています。会社の風通しをよくするのが自分の仕事ですね」と謙遜する。
その風通しの良さが事業にも良い影響を与えている。
「お酒を飲めない人って、飲めるようになるとちょっと大人になったみたいで嬉しいんですよね。こういう人って他にもいるんじゃないかなと思い、女性社員と一緒に低アルコールの日本酒やリキュールを開発したりもしていますよ」と自然体での経営が組織を活発化させている。
成瀬社長は「お酒は嗜好品ですから、『美味しいですよ』って押し付けるよりも、お客様が自ら美味しいお酒を見つけてほしい。そのお手伝いをちょこっとできたらいいと思います。これは組織にも言えることで、なんとなく働きかけ、見守り、自分なりにできることを考え、自ら楽しんでやる。そんな組織でありたいですね」と一歩引いた目線で会社を支えている。