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鳥取は「観光と食」に可能性があるかもしれない

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「食と観光」に目を向ける

 地方は、これから何で稼いでいけばいいのか。一つとして、「食と観光」を提言したいと思っています。食と観光というと、2016年に内閣府より交付された日本最高戦略では、農業も観光も共に挙げられており、「地方創生」であったり、「観光立国」という言葉に紐付き、日本国内全体で注目を集めています。

 ボーイング社の長期予測によれば、2030年には航空機の数が今のおよそ倍になり、航空運賃は下がり国際交流人口が増加することやここ近年の先進国を中心とした世界的な健康志向や和食ブームなど追い風ムードが漂いつつあります。

 そこで今回は、高城剛さんの著書「人口18万の街がなぜ世界一になれたのかースペイン・サンセバスチャンの奇跡」をご紹介します。サンセバスチャンの取り組みを日本の食と観光分野のこれから、そして鳥取も参考にできるかもしれません。

美食の街「サンセバスチャン」

 サンセバスチャンとは、スペイン・バスク地方に位置し、人口は18万人(北海道の釧路市とほぼ同じ)、目立った観光遺産があるわけでもなく、交通の便がいいわけでもない。

 そんな街がなぜ世界一の美食の街になれたのか。その背景には、料理を押し出した徹底的な地域戦略がありました。世界で最も注目を集めているレストランが2つあり、三ツ星レストランが3店、二つ星レストランが2店、一つ星レストランが4店もこの一つの小さな街にあります。

 それも、ずっと内戦をしていた地域でここ10年で世界一の美食の街と謳われるようになったことも非常に興味深いです。

 シリコンバレーがIT産業に特化したように、料理に特化することで他の街との差別化を図ると共に、地域を再興させました。製造業が行き詰まったこれからの日本にとって、地域戦略としてサンセバスチャンに学ぶべきことは多いです。

観光産業の可能性

 実は、観光産業は21世紀最大の産業と言われている。世界のGDP比率のおよそ1割を占めていて、11人に1人を雇用する基幹産業です。冒頭でも述べたように、航空機の数も増えいて国際交流人口が今後伸びることが予想されます。

 アメリカもスペインもフランスもイタリアも先進国をはじめとし、タイやカンボジアなど東南アジアの国々も、観光産業を国の基幹産業としている。規模感で言えば、日本の観光収入は、スペインのおよそ半分、アメリカの4分の一です。タイも日本のおよそ1.5倍の額を稼いでいます。

 日本には、歴史も文化も自然も食も揃っていて、ビザが緩和されているし、治安もいい。日本の年間の観光客数はおよそ3,000万人で観光収入は5兆円ですが、国際交流人口の割合から言えば、まだまだ人を取り込める可能性があり、大きな伸び代を秘めていると言えます。

サンセバスチャンの取り組み

 サンセバスチャンは、いかにして世界一の美食の街と謳われるよりになったのか。大きく3つの取り組みをあげることができます。

 まず1つ目は、街の男たちが地元の食材を持ち寄り、下手でも自分たちで料理をしながら、自分の地元の食材をどのようにして食べたら美味しのかを追求する美食倶楽部をつくったことです。

 2つ目は、下積み制度やレシピの平素化などの料理業界のアンチテーゼを覆し料理のレシピをオープンソース化したり、料理専門の4年制大学をつくることで、若いシェフたちが中心となって、「ヌエバ・コッシーナ」(スペイン語で新しい料理の意味)と呼ばれる料理が生みだしました。その料理は、今までのクラシックな料理法ではなく、地元の食材を活かすすとともに世界中を旅した時に食べた料理を織り込みました。

 3つ目は、「分子料理」と呼ばれている料理を開発したことです。おいしさを分子レベルで科学した人物がいました。

 このような取り組みが次第にスペイン、地中海全域に拡がり、バスクの地で生まれた「ヌエバ・コッシーナ」は世界中を席巻するようになり、世界一予約の取れないレストランと評される「エル・ブリ」(2011年に閉店)を生みまし他のです。

今あるものを活かして一体感を持つ

 いかがでしたでしょうか?観光産業の産業としての伸び代やサンセバスチャンの取り組みを総括していくと、日本の観光と食に希望が浮かび上がってきませんか?

 日本は自然や歴史、文化に富んでいて、美味しい食べ物があります。治安もいいし物価もさほど今は高くありません。ビザも緩和されました。証拠として、ここ5年間で観光客数は倍増していて、日本の観光収入は右肩上がりの傾向にあります。

 ただ欠けているのは、戦略です。自分たちの持っているものを大切にし、活かそうとする視点です。ゆるキャラやB級グルメでは世界の観光客を取り込むことができません。今世界で旅行をしている人たちが誰なのか全く考えていないことが明らかな取り組みと言えます。

 日本の地域もサンセバスチャンのように、自分たちが持っているものに今一度立ち返って、「今あるものを活かす」ということに重きを置き、観光戦略を練ることが大切だと思います。

 そして最後に、3つの取り組みで共通して言えるのは、街全体の一体感です。日本の地域でも勢いのあると言われる地域では、街全体の一体感があると思います。宮崎県の新富町や石川県の加賀市や岡山県の西粟倉村などは、その街が目指すものの方向性やコンセプトが明確で、一体感を感じます。

 鳥取県が地域、街全体の一体感を持てるかどうか。地域の戦略の成功の振れ幅を大きく左右すると思います。皆さんはどう思いますか?

参考文献

「人口18万の街がなぜ世界一になれたのかースペイン・サンセバスチャンの奇跡」

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