【旬刊政経レポートとのコラボ】
月に一度、旬刊政経レポートと記事交換をするコラボをさせていただいています。第四回目は【「大山チャンネル」のアマゾンラテルナが事務所移転】を掲載させていただきます。
クリエイティブスペースを新設
大山町のケーブルテレビ「大山チャンネル」で、町民を巻き込んだ番組制作などを手掛けている㈱アマゾンラテルナ、鳥取大山オフィス(貝本正紀代表)の事務所が6月1日に移転した。
場所は大山町富永159-1、北は日本海、南は大山を一望できるカフェBIKAIの2階。
事務所スペース隣には、コラボレーション特化型のクリエイティブスペース「TORICO」を新たに設置した。7月頃のオープンを目途に今後、町民や町内企業、都市部と大山町が繋がる場などとして活用される。
アマゾンラテルナは、東京・渋谷にオフィスを構える番組制作会社。貝本氏(44)はそこで、NHKや民放各局の番組制作などを手掛けてきた。
「テレビの将来を考えた時、これまでにない在り方を模索する必要性を感じていた。そんなとき、知人がきっかけで、大山町の住民参加型による総合計画策定のためのワークショップを取材したのが、大山町との最初のつながりです」と貝本氏。
役場職員との会話の中で「テレビで地域を巻き込み、地域を元気にできないか」という思いをもつ貝本氏と、地元のケーブルテレビを活性化させたいと願う役場側が意気投合。
2015年、大山町にアマゾンラテルナのサテライトオフィスを開設し、ケーブルテレビ「大山チャンネル」の年間業務委託を受けた。
貝本氏は奈良県出身で鳥取とは縁もゆかりもなかったが、これを機に家族とともに大山町に移住している。
「テレビによる地域活性化。これが継続可能な事業として成り立たないかと考えています。過疎の進む大山町でそれが可能であれば、他の地方の活性に活かすことができる」。
大山チャンネルの特徴は何と言っても、町民を大いに巻き込んだ番組作りだ。これまでに延べで約2300人が制作や出演者等、様々な形で関わっている。
「テレビは誰でも何かしらに携わることができる懐の広さを持つ世界だ」と貝本氏。いい声で挨拶するコンビニ店員の若者を見つけては「ナレーションしない?」、美術やデザインが得意な学生を見つけては「スタジオセットを作ってよ」、ドローンを飛ばす男性を見つけては「PRしませんか」といった具合に、徐々に大山チャンネルの〝関係者人口〟を増やしていった。
番組制作には「行政が見てほしい番組よりも住民が見たい番組を」との思いを込めている。町長と住民、中学生が町の未来を語り合う「ガチンコ討論!」、知られざる伝説を徹底調査する「スクープ!発見!大山伝説」など、一つひとつのスケールは決して大きくはないが、新たな発見があったり繋がりが生まれたり、困りごとが解消される、そんな番組が増えていった。
そして「大山チャンネル」は、加入者の半数が「毎回見ている」、約6割が「満足している」(※2016年満足度調査)ケーブルテレビ局へと変貌した。
「面白い人が沢山いて、その魅力を伝えることでさらに地域が好きになる。また『昨日の番組見た?』という具合に、老若男女、町民の共通の話題となることで、日常にほんの少しの潤いを与えることができたらなという思いもあります」と貝本氏。
新しい拠点は、約500平方㍍のスペースが3つのエリアに分かれている。オフィスと「TORICO」が隣接しており、それとは別に壁で仕切られた会議・商談ゾーンも設けた。
中でも「TORICO」は今後、様々な課題解決や、新たな魅力や仕事が生まれる場として活用していく予定だ。
例えば、儲かる農業をしたいが、既存のやり方からなかなか脱却できない。そんな農家の悩みを一つのテーマにして、大山町内の農家と、キーマンとなり得る人たちとをつないでいく。
貝本氏は、番組作りを通じて毎日のように住民と向き合う中で、どこに誰がいてどう困っているか、ニーズは何か。そして誰がそれを解決できそうか。それらをおおよそ把握しており、「そういう情報をオープンに活用したい。個性あふれる町の人たちをフラットに繋げる存在に。それが、僕らみたいな小さなメディアができる事の一つじゃないかなと思います」と話す。
県外企業や都市部のビジネスマンのワーケーションの場として、都市と大山町との接点を生む仕掛けも。
貝本氏は、「内と外とをダイナミックにつなげていく。現実は毎年、若者の多くが町を出ていき、帰ってこない。そんな中で、彼らが帰ってこれる環境、仕事づくり。それが、TORICOの究極の目標です」とした。