事例

ネット活用で生産者と消費者をつなぐバッグ製造小売業(後編)

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この記事は後編です。前編の記事はこちら

 多くのメーカーでは、作った商品を卸商社や小売店を経て消費者に届けるのが一般的だ。メーカーは売るための努力や責任を仲介業者に任せられる一方で、消費者は仲介業者が得る利益を上乗せした価格を支払わねばならない。

 鳥取市出身の戸田社長(31)が展開するバッグブランド「HushTug(ハッシュタグ)」では、仲介業者を頼ることなく、自らが顧客を獲得し維持している。

-ラズホールディング株式会社代表取締役 戸田貴久氏-

聞き手:北村真吾/中小企業診断士

無名だったバッグブランド「HushTug」の販路をどのように広げましたか。

 このブランドを立ち上げたのは2018年11月です。当初から、卸商社を通じて小売店で販売するという既存の流通経路は使わず、お客さんと直接取引しようと決めていました。

 まずはクラウドファンディングを使いました。クラウドファンディングとは、私たちのバッグに興味を持つ人、支援したい人からネットを通じてお金をいただき、返礼品としてバッグをお返しする仕組みです。

 ファンディング(資金調達)と呼ばれていますが、実際には販路や資金力が不足する起業家が、新商品を消費者に直接販売するためによく利用されています。

 ここで最初の商品であるトートバッグとコインケースの、2種類の販売を始めました。

-使い込まれた戸田社長私物のコインケース
HushTug(ハッシュタグ)の立ち上げを支えた思い出深いものだ

 期間中の合計売上が450万円を超え、成果は予想を上回るものでした。しかし、クラウドファンディングは期間を決めて資金調達する仕組みであり、継続的に売上が上げられるものではありません。

 継続的に商売をするため、また、商売をさらに大きくするため、自分たちでECサイトを立ち上げました。クラウドファンディングから脱却し、本当の意味でのお客さんとの直接販売を始めたのは2019年4月のことです。

お客様への直接販売を進める御社では、顧客獲得にどのような工夫をしていますか。

 一般的には、メーカーが顧客を獲得するのは難しいものですが、実現できれば、いいものを安くお届けできるという大きなメリットがあります。私たちはこのような工夫をしています。

 ある人がふと、バッグが欲しいと思ったとします。その人はどんな行動をするでしょうか。グーグルやインスタグラムで「メンズ」「バッグ」と検索し、見つかった商品の中からどれを買うか比較検討するでしょう。

 ということは、検索の上位に表示されるサイトに掲載してもらうことができれば、私たちの商品が選ばれやすくなるということです。

 そこで、上位サイトの管理者に説明資料をメールで送り「当社の商品を掲載してください」と片っ端からお願いしました。しかし当時はまだHushTugは無名のブランド。

 掲載を断られる、もしくは無視されることが多かったです。ただ、バッグやファッションの話題を趣味でネットに書いている個人ブロガーの幾人かは取り上げてくれました。

 私たちの商品が掲載されたそのブログのアクセスや販売状況のデータ取りまとめ、また改めて他のブロガーや上位サイトに営業する。そんなことを繰り返していました。

 転機になったのは、メンズバッグ専門サイトの最大手が掲載してくれたことです。ここから売上が一気に増えました。この営業方法を始めて3、4ヶ月目のことでした。

お客さんとのやり取りはネット上のみですが、販売後はどのようにフォローしていますか。

 販売後もいかにお客さんと継続的にやり取りができるかは、実は売ることよりも重要です。

 そのための取り組みとして、購入から1ヶ月以内にアンケートを取っています。

 今までの累計購入者1万人超の中で実際にアンケートに答えてくれたのは約2500人。アンケート回収率は20%以上なので、一般的には十分に高いと思います。

 質問項目は、年齢、性別、買った商品、商品を知ったきっかけ、購入の決め手になったもの、他に比較検討したブランド、今後開発してほしい商品、の合計7項目です。皆さんのニーズ、要望、不満を、次なるサービスや商品開発に活かしています。

 他には、購入者にはモンゴルの自社工房で働く現地の人から手書きのお礼状が届きます。モンゴルの消印がついたモンゴル語の手紙をもらった人はほとんどいないでしょう。皆さんとても驚かれます。ただ、最近はコロナの影響で中断しているのが残念です。早く再開したいものです。

ビジネスに興味を持つ大学生にメッセージをお願いします。

 金額はいくらでもいい。本当に1円でも10円でもいい。自分の力でお金を稼ぐ経験をしてほしいです。下請けでも業務請負でも、何なら靴磨きでも、手段は何でもいいのです。

 お金はお客様に価値を提供し、その見返りとして頂けるものです。1時間いくらというバイトのような稼ぎ方だけではなく、学生の時に自分で営業して自分で稼ぐ経験をするかしないかで、人生は確実に大きく変わります。将来、自分でビジネスをやりたいなら、1円でもいいので稼ぐ経験を積むことを強くおすすめします。     

プロフィール

ラズホールディング株式会社

代表取締役:戸田貴久

事 業:バッグ製造小売業

所在地:東京都豊島区南大塚3134-7丸善大塚ビル6F

従業員:日本4人、モンゴル30人

資本金:100万円

 

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