既存のフレームワークは使える形になっていない・使うことが難しい
問題発見や市場分析、課題解決アイデア、戦略立案、業務改善、組織マネジメントなどを課せられたときに、迅速に対応できるための枠組みとして、ビジネスフレームワークというものがあります。
有名なものでは、PDCA(Plan Do Check Action)チェックシートや、ロジックツリー、カスタマージャーニーマップ、ペルソナなど、たくさんのものがあり、すでに知っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
しかし、その多くのフレームワークは、仕事の現場で使われていないという話をよく聞きます。原因は、多くの既存のフレームワークが「使える」形になっていないからだと思います。
今回は、元日本IBMエグゼクティブ・プロジェクト・マネージャーの木部智之著の「複雑な問題が一瞬でシンプルになる『2軸思考』」という本の書評を通して、フレームワークを使える形にしてくれる「2軸思考」という思考法の基本から実践の入り口までご紹介していきます。
2軸思考の効果
2軸思考とは、木部智之さんが考える世界一簡単かつ、絶大な生産性を生み出してくれる思考法です。フレームワークを「使える」形にする以外にも、色々な効果があります。以下に2軸思考の効果を並べました。
- 全体像を把握できる
- 「複雑なものをシンプルにして、誰かに伝えたり、自分で考えたりする」という流れのスピードがアップする
- 物事の「構造」が浮かび上がる
- あらゆるフレームワークが「使える」形になる
上の項目からもわかる通り、2軸思考とは経営戦略や、マーケティングに携わる人達だけのための思考法やフレームワークではなく、「普通の人」にとっても武器になります。
2軸思考のフレームワークの作り方
2軸思考(2軸フレームワーク)を使いこなす工程は大きく3段階に分けられます。
➀考える目的に合わせて枠のタイプを決める
2軸フレームワークには次のような3つのパターンがあります。
タイプ別の説明はのちほど致します。
➁縦横軸を決める
軸に成り得るのは、
- 要素(静的な断面情報:商品,売上,部門,…)
- 流れ(動的な変化を表す情報:時間,行程,…)
のどちらかです。
➂枠に情報を埋める
枠の中には、
- 定量情報(数字)
- 定性情報(数字以外)
のどちらかを入れます。定性情報より定量情報の方がより質の高いものになります。しかし、時間がかかってしまいます。
次にタイプ別についてです。それぞれ1.「目的に合ったタイプを選ぶ」2.「縦横軸を決める」3.「枠に情報を埋める」の3ステップに沿って説明していきます。
マトリクスタイプ
マトリクスタイプは最も融通が利き、どのタイプにするか迷われた時には、マトリクスタイプを使うことをお勧めします。
1.「目的に合ったタイプを選ぶ」
マトリクスタイプは、全体を俯瞰することができます。問題の全体像の把握、複雑な事象の整理、複数の選択肢から優先順位をつけるときなどに向いています。
2.「縦横軸を決める」
軸のパターンは「(縦)要素×(横)要素」と「(縦)要素×(横)流れ」です。ポイントはどちらも「モレなく、ダブりなく」書くことと、横軸の数を多くしないことです。
3.「枠に情報を埋める」
枠に埋める情報は定量情報が望ましく、問題の整理・分析では定量情報の方が客観性の高いものになるからです。またポイントは、無駄な枠は埋めないということです。
4象限タイプ
1.「目的に合ったタイプを選ぶ」
4象限タイプはポジショニングや全体の分散の傾向を捉えるときに使われます。
2.「縦横軸を決める」
軸になるものは、マトリクスタイプと同じく要素と流れですが、マトリクスタイプは要素の軸にあらゆる要素を洗い出すのに対して、4象限タイプではあらかじめ要素を2つに絞ります。最初に仮設を立ててから、最も良いと思った要素を使って表を作っていってください。
ポイントは、上と下、右と左は必ず正反対の内容が来るようにしてください。また、右上に「良い要素」、左下に「悪い要素」を入れてください。
3.「枠に情報を埋める」
マトリクスタイプと同じくデータがあれば定量情報を使い、アイデアを出したり、課題を洗い出したりするときには定性情報を使ってください。
グラフタイプ
グラフタイプは3つのタイプの中で変化を視覚的に捉えるものです。
1.「目的に合ったタイプを選ぶ」
グラフタイプは変化を表したり捉えたりするものです。売上データの時間変化を分析したり、売上向上のためのアクションの効果を示したりするときに使うことができます。
2.「縦横軸を決める」
基本は「(縦)大きさ×(横)流れ」です。マトリクスと同じで、表が見えやすくなるのは横軸に流れが来る場合です。
また、グラフ型は基本的には下から上、左から右の方向に矢印が向きますが、伝えたい内容によっては、要素の低さを強調したいものもあるので、矢印の方向は決まっていません。
3.「枠に情報を埋める」
グラフタイプは、どのタイプのグラフを入れるかが最も重要です。表す変化によっては棒グラフがよかったり、折れ線グラフがよかったりするのです。主なグラフタイプは次の6種類です。
- 棒グラフ:縦軸にデータ量をとり、グラフの高さでデータの大小を表す。
- 折れ線グラフ:時系列でデータの変化を見る際に使う。
- ヒストグラム:データの散らばりを見る際に使う。
- パレート図:棒グラフで要因の大きさ,量を、折れ線グラフで個々の要因が全体に占める割合を表す。
- 構成比率棒グラフ:グラフの幅を揃え、内訳構成の差異を捉える。
- ウォーターフォールチャート:増加減少の説明に適した可視化グラフ
以上の6つのグラフのタイプの特徴をしっかりと抑えて選んでいってください。トレーニングを重ねて同じデータから違うタイプのグラフを作ってみると見えてくるものが変わると思います。
2軸思考の使い方
ここからは実践のためのフェーズに移っていきます。実際のビジネスの現場では、一つの2軸タイプだけで問題が解決することはありません。問題の複雑さに応じて使う2軸タイプの組み合わせは増えていきます。
組み合わせる理由は視点(ある物事を見る場所)、視野(ある物事を見る範囲)、視座(ある物事を見る立場)を変化させるためです。
次に重要なのは、複数の2軸を使う場合です。まず、マトリクスタイプを作り、次に4象限タイプやグラフタイプに展開していきます。マトリクスタイプで浅く広くデータを並べ、その中でより細かく見たいところを4象限でポジショニングしたり、2~3個に対象を絞ってグラフとして並べたりすることで、データを競合視点側から見ることができたり、視野をあえて狭めることで、見逃しそうな小さな変化に着目できるのです。
また、8割の問題は事象や、データをマトリクスで「並べるだけ」で何かが見えてきます。特に次の図のように「事象・課題・アクション」と分けることがお勧めです。
最後に
2軸思考によって最速でゴールにたどりつくためのカギは
- 何事もまず考える枠を決める
- 全体像
- 無駄に考えない
です。普段の生活のちょっとしたことに2軸を引いて分析してみてください。最初は上手くできないかもしれませんが、回数を重ねるごとに質の良いものになり、悩む時間を考える時間に回すことができるようになります。
今回は、2軸思考の基本と実践のさわりのみを発信しましたが、これから具体的に「2軸であらゆるフレームワークを使える形にしたもの」や、「これから鳥取で起きる問題や課題を2軸思考でまとめたもの」を発信できたらと思います。
参考書籍
「複雑な問題が一瞬でシンプルになる2軸思考」