地域のプレイヤー

県内就職を阻む見えない壁と希望 第二部:地元企業に期待すること

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※本記事は二部構成になります。一部を未読の方は、一部からお読みください。

 その後私は社会人となり、顧客企業のIT化や業務改善を推進してきた。その経験から、地元企業に足りない視点と期待することを提案する。

求職者に選ばれる求人を

 付加価値高く、給与も高い。そんな仕事を地域に求めている人が、都会に残留している。彼らは地元の就職先を探す。探した結果、おそらくは失望とともに、静かに、断念している。彼らに魅力的な仕事をオファーするのは県内企業の責任である。求人マッチング不成立の原因を、求職者に求めてはいけない。求人の質である。求人の質はそもそも、業務の質である。付加価値の高い業務をしているかどうか、あるいはそうでないか、企業の姿勢が如実に表れる。

業務を変革するということ

 あなたの会社で、10年前の業務と変わったことは何だろうか?たとえば、ITという観点で考えてみる。

<ITを使った業務変革の例>

・ITシステム/サービスを導入したから、受注量が10倍になっても捌けるほどになった

・インターネットで海外からも仕事の注文が来るようになった

・インターネットで海外に仕事を発注するようになった

 このように、ITが多くの業務を代行(圧倒的多数の方への営業、受注、納品など)してくれるようになると、生身の従業員に残された業務はおのずと付加価値の高い業務(企画、設計、戦略、意思決定など)だけになる。ということは従業員一人一人の生産性が高くなり、高給を支払う余地ができる。

 結果的に求人の質が増す。くれぐれも注意されたいのは、ファックスがメールになった、手書きの請求書からExcelの請求書になった、、、といった枝葉の事象は変革とは呼べないことだ。従業員一人当たりの生産性がほぼ変わらないからだ。

IT強化を担う部門を創設せよ

先ほど挙げたような、ITを使った業務の変革。この変革を行っていく業務自体が、実は高い付加価値を持っている。簡単な仕事ではないし、企業が得られる利益が大きいからだ。ではなぜ県内企業はITを強化できなかったのか。それは、その業務を担う能力のある人材が企業内にいなかったからだろう。いや、そのようなポストが無かったからではないか?

変革を起こすには、片手間では到底不可能だ。だからこそ、この業務を担う専任ポストを用意する。必要な人材を採用する。つまり戦略的にIT強化を担う部署の創設と、人材の採用だ。まさに①②(前回を参照のこと)の形だ。そういう会社に人は集う。なにも無期雇用でなくてよい。ITコンサルタント企業に委託するでもよいし、フリーランスに業務委託する形でも良いだろう。

幸いにも副業を認められた方は多くいる。そういった方々の力を借りるだけだ。ただし「欠員の補充」であってはならない。新規ポストをまず作り、ここに人を充てる。代替要員の補充ではない。従来の業務の延長線上でしかものを考えられない会社に、業務改革を勝手にしてくれるような優秀な人は、まず来ない。

鳥取が持つ潜在的な希望

このような取り組みを企業がすることで、企業の競争力は高まり、経済振興が図られる。さらにはそれを担う主力となる人材を募集することで、”見えない壁”が取り払われ、Uターンはじめ地元就職の道がいっそう広がる。それはつまり”見えない壁”に抑圧されてきた人材の地域への還流を促進し、経済成長を進めるということである。ということは、成長のポテンシャルが鳥取にはある。

壁が厚く高いからこそ、悲歎するのではなく、むしろ成長のポテンシャルエネルギーがより高いのだと私は期待する。だからこそそういう企業を熱心に探したし、幸いにもマッチングできたからこそ、私はUターンを決断した。県内企業の多くが、このようなチャレンジを行うことを期待する。

最後に

「鳥取のポテンシャル」

鳥取県内の求人の質は低い。これを高めていくことは、Uターンを促進するばかりでなく、企業の競争力を高め、地域の経済振興が促進される。その成長ポテンシャルが鳥取にはある。

プロフィール

氏名:生田章訓

所属:株式会社レクサー・リサーチ

趣味:釣り&サウナ好き。

経歴:倉吉東高校⇒東京大学卒業。地元就職を考えるも幻滅し、断念。大学院進学後、東京で就職し腕を磨く。その後Uターン。
※発言は個人の体験に基づく私見であり所属団体の意見を代表するものではありません。

参考文献

日本経済のネックは零細企業、彼らの生産性を上げる「切り札」とは

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