事例

NPO法人学生人材バンクに迫る〜人材バンクの事業について【前編】〜

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 NPO法人学生人材バンク

 TOTTORI BUSINESS ONLINEでは、「鳥取の営みの最大化」を目的に、地域の様々な営みを紹介しています。今回、NPO法人学生人材バンク(以後、人材バンク)について、代表である中川玄洋さんにお話を伺いました。

NPO学生人材バンクの代表:中川玄洋さん

 ※本記事は、前編になります。

人材バンクの事業について教えてください!

 2002年に僕が大学院一年生の時に創業して以来、今年18年目になります。今は NPO 法人という形態をとっている組織です。人と地域をつなげるコーディネートをしていて、主な事業は二つあります。

 視点が二つあって一つ目は、大学生が行ってみたいと思うことを、地域でプロジェクトを作っていく「企画屋さん」。

 二つ目は、学生主体ではなく地域側から、「こういうことやりたい学生っていませんか?」という要望を聞いて、地域の企業と人材マッチングを行なっています。僕は「平和な人さらい」と呼んでいるんですけど、ボランティアから普通のお仕事まで幅広く人を繋いでいる会社です。

 サービスエリアは鳥取県全体が主になります。現在のクライアントは行政が多く、地元企業がクライアントの時もあります。弊社は後回しにしてしまいがちな地域や企業の課題を、課題に興味がある学生に繋ぐ仕事を売りにしており、依頼をする側(地域・企業)と受ける側(学生等)の両方をwinwinな関係にすることを意識しています。

他に取り組まれていることはありますか?

 企業とのやり取りを詳しく話すと、企業さんの長期の実践型インターンシップを学生さんに紹介することもやっています。長期のインターンは、年間に5~10社ぐらい実施しています。

 今年は新型コロナの事もあって申込みのまま止めているものもあるのですが、ここ数年で急に増えてきている気がします。それだけではなく、企業の人材育成なども含めた関わる会社数は増加しています。

 一方、学生がインターンをしたいと言って来た場合は、何をしたいかを聞きます。そして地域内にそういう企業があるかを調べます。また鳥取県の企業の中で、学生の希望に対応できない場合は全国にある業界で情報共有して、やれそうなインターンがあれば全国にいる仲間に紹介します。

 業種や事業内容について掲載している募集サイトはあるので、学生さんに「ココが興味近そうだね」のような話をして、本人にとって、よりベターなことを考えることを優先させています。

 売上だけ考えれば、自社のコーディネートプロジェクトに巻き込んで、マッチングした方が良いのですが、無理やりマッチングさせると本人の人生にとってマイナスになる場合もあると考えています。

 その場合、長期的に考えれば良くないので、「学生人材バンクにお世話になった」と思った人を世の中にどれだけ増やすかが、弊社のこれからの10年や20年を決めると思っているので、学生と企業の両方にとって良い選択肢になるように意識しています。

 そのため、企業さん側がこの学生だったら良いなと思ったら、その学生を紹介するし、企業さんにとって、この学生はどうなんだろうねってなったらその学生さんは取らないようにしています。学生側は最初に企業を選んでいるので、その辺はお互いフェアかなと。

学生人材バンクのインターシップはどのような企業と取り組まれているんですか?

 学生人材バンクのインターンシップの受け入れ先の企業って、多くは、僕自身の年齢(41歳)に近い30代後半から40代ぐらいの経営者が多いんです。そういう方たちは、一般的には事業を受け継いだばっかりだったり、これから受け継ぐというタイミングが多い。その場合は、新しいことを会社の人たちに指示し難い状況にあるんです。

 例えば、自分より年上の従業員だったり、これまでのやり方を大きく変えるにはまだ理解が少なかったり。状況は様々です。

 しかし、経営者としては未来の売り上げを作んなきゃいけないとなった時に、僕らは経営者の方と、やってみたいことを話をしながら、「それってこういうプロジェクトで切り出せるんじゃないんですか?」ってやり方を一緒に探ります。

 そして、そこを期間限定で学生と一緒にやってみませんかと設計して、学生を募集して、実施を伴走しています。

 この妄想みたいなところから、タスクを切り出す、スケジュールを切ることをして、会社の中に大学生の役割を作り、申し込んだ学生が挑みます。

 最近では企業でのインターンシップが当たり前になってきました。これはこの5年ぐらいで一気に変わったんですけど、長期インターンではいわゆる職場体験や、課題解決のアイデアだしとか、どちらかと言うとブレインストーミングに近いものとは違って、経営者の右腕、新しい動きへの原動力を意識しています。

 長期って言う最低でも一か月、最大で半年かかるようなご提案をするので、中小企業の方にとっては、ソリューションとして意識してもらえるように。アイデアだしや指示されたことだけをやることにとどまらないプログラムにしています。

 その方が大学生にとっても、足りない部分を工夫しながら、体感しながら実践することになります。これは社会に出た時に仕事に役に立ったりとか業界で働くときのヒントになったりします。そういう大学生にとっての人材育成の一面になるようにもプログラムの実行では伴走していきます。

企業や学生にとってのメリットをもう少し伺いたいです。

企業から弊社に関わるメリットは3点あって、

  • 状況整理ができる
  • 次への一歩を具体的に考えられる
  • 大学生や副業人材などの期間限定の仲間を見つけてくれる

 インターンシップだけじゃなく副業も流行ってきていますが、何を具体的に頼めばよいのかまで一緒に考えるのはこれは大きなメリットなのではないかと考えます。

 また、大学生とか副業したい若手社会人にとっては、一人ではなかなか見つけられない地方の課題に触れることができる。もしくは、そこを考慮したプログラムに参加することができるということがメリットだと思います。

 半年先がわからないようなことが起こる世の中において、現場対応力や困難な状況を前向きに乗り切る経験は、今後においても貴重なレベルアップの機会になります。

 弊社はそういった企業と学生がキッカケをつくる、「入り口」でもあり、地域企業と学生との間をつなぐ「翻訳者」でもあると思っています。

※後編はこちら
NPO法人学生人材バンクに迫る〜人材バンクの事業について【後編】〜

NPO法人学生人材バンク

  • 2002年当時大学院生だった代表理事の中川が学生団体として創業
  • 2008年にNPO法人化、大学生と地域・企業をつなげる事業を行っている通算18年目。
  • 創業時から主に鳥取県の委託事業を受託して生きている。
  • 近年では都市部副業人材のコーディネートや県内若手社会人の研修など対象となる世代を徐々に広げている。
  • 2015年に鳥取銀行、2017年鳥取信用金庫、2018年倉吉信用金庫と業務提携を結び、地元中小企業との連携も深めている。

NPO法人学生人材バンク

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